そして私が娘を連れてあの地へ行くことになるだなんて想像もしていなかった。
私の記憶はおぼろげで、あの灼熱の太陽に照らされていた肌のほてりと、街を包み込む熱気、あのマーケットの奥に位置していた2階の食堂で食べたあのスナック菓子の味。
時はすでに何度も流れているけれど、あのときへ戻ることはもはやない。
アフガン料理のヨーグルトのすっぱさ。ルームサービスのコーヒーの味。
コルカッタの夜に入っていたプールを照らしていた月の光と水の生暖かさ。
ボーイがこちらを見て微笑みかけていたあの瞬間。
それはすでに過去の深遠に置き去りにされ、二度と私の目の前に現れることはない。
そしてあの大河で沐浴をしている何万人にも混ざり、私もその地へ降り立つのだ。
その昔、太陽神へ向かって祈祷をささげていた彼。
そしてその光景をさげすみながら見ていた私。
時が過ぎ、お互いがその世界を放り出し、戻ってきたのはお互いの世界。
交じり合うことの無い液体は、やがて蒸気となって、この大宇宙の隅々までとどろかすのだろうか、その雄たけびを。
メヘンディに込められているメタファー。
ビンディに託している思い。
そのつぶらなまでの瞳から、あなたは一体、何を訴えたいのだろうか。
あの時はホテルの中からしか見なかった光景。
その世界と、すでに交じり合い始めた私かもしれない。
とても不思議な感覚。
流れに乗ってついていこう。
ラマンを包み込んだメコン川。そこをクルーズしていた私たち。
一粒の雨はやがて川となり、海へと繋がっていく。
その道の一筋が私とからまり、どんな世界を織り成すのだろう。
彼女の悲しみは、その涙の量では推し量れない。
それは広大な砂漠にありもしない、オアシスと一緒なのだから。
あの体験の後、ずいぶん、歳をとったようだと言っていた彼女。
私は彼女を直接知らないが、それでも私はメコンで眺めていた、あの到底変わりはしない歴史の波の流れを。
私は一体、ガンガーで何を眺めるのだろうか。
そして私の横にいる彼女は、その体験からどんな世界へ旅をすることになるのだろうか。
魂の入っていない作品は芸術ではない、と彼は言っていた。
果たしてそれが本当ならば、魂のこもっていない時の流れは、一体何に値するのだろうか。
その答えを見つけるために、私は毎日生きているのだ。