2009/08/13

「美徳の経営」より

デザインはその意味で、多様な要素、離れた問題をネットワークし、「綜合」する能力である。これは分析的な思考や能力ではない。


芸術家的企業家の時代に、リーダーに求められるのは、審美的な価値判断の能力である。(中略)これまでの経営の世界では、一部のマーケティングやデザイン・マネジメント(デザイン資産・効果の戦略的活用)などを除けば、こうした「美」的要素は「趣味(テイスト)」や「感性(センス)」の問題として認識され、真正面から取り上げられたことはなかった。


21世紀の企業の卓越性の一面は、こうした審美性、価値判断、独自の美学やビジョンによって支えられると考えられるのである。


デザインの役割は大きい。それは社会的な見通しを経営や技術に与え、カタチにすることである(媒介)。同時にハードとソフト、サービスなどの異質な要素を統合することである(結合)。さらに長期的な戦略や経営、市場の姿を直感的に視覚化、形態化することである(形成)。


デザインの目的は、最小の構造に最大の意味を包含できるような、多様で含蓄のある価値やコンセプトを、最もシンプルな構造や体系で表現することである。そして、デザインは、その過程を通じて、複雑な問題解決に確かさを与え、人間のための本質的な社会的便益を具現化し、創造的な感性を満足させる。この3つはいわば真善美のついきゅうでもある。

美学とは、自然や芸術における「美」や美的現象の本質や原理、構造を解明する学である。それは美を知り、考え、判断する力である。美学、エステティカのギリシャ語源であるアイステトンは「感覚すること」である。つまり美学のルーツは美を感じること、反応することについての学である。



ドブソンを初めとして「美的リーダー(aesthetic leadership)」などのキーワードや「アート的企業(artful firm)」といった概念が提言され始めている。これはアメリカン・スタンダードとは異なる経営概念への取り組みとも見てとれるが、むしろグローバルな「美徳の経営」への転換の兆候ととらえることができる。

アントニオ・ストラティは、組織の暗黙知は美学と共通するものがあり、創造性と効率性を共存させる「ハイパーテキスト型組織」が組織形態として望ましいと述べた。

0 件のコメント:

コメントを投稿